
「ミラノサローネはミラノで創設されましたが、常に世界との間に築いてきた関係性を通じて成長してきました。経済、社会、文化の変化が同時に起こっている場所には、デザインの未来を特に明確に思い描くことのできる場所があります。今日のインドネシアは、そのひとつです。
急速な都市開発が進む一方で、豊かなマテリアルカルチャーが存在し、また、産業とクラフツマンシップ、地域資源とイノベーション、アイデンティティと国際的な開放性を、現代的な方法で結びつけようとしている新しい世代が生まれています。
サローネにとって、ここにいるということは、この変化に関わり、自らが持つ企業、デザイナー、専門家のネットワークと、新たなエネルギーの源との間に対話を生み出すことを意味します。そして何よりも、この関わりを通じて自分たちの視野を広げることを意味します。私にとって、これこそが国際的に活動することの最も興味深い側面です。」
と、ミラノサローネのマリア・ポッロ代表は語ります。
2024年の香港、そして2025年大阪・関西万博のイタリア館に続き、ジャカルタはパーマネント・コレクションにとって3度目となる海外巡回展の開催地となり、ミラノサローネのグローバルな歩みに新たな章を開きます。
今回の開催地が選ばれた理由は、単に展覧会を開催するためだけではありません。プロトタイプから製品へと発展した作品、若手デザイナーから業界を牽引する存在へと成長した人々、そして出会いから産業界のストーリーへと発展した事例を蓄積する「生きたアーカイブ」としてのサローネサテリテを、ミラノサローネの国際化戦略の不可欠な一部として提示すること。そのためには、才能、ビジネス、文化の対話を通じて、デザインとデザイン産業の未来が最も明確に見えてくる場所から国際巡回展をスタートすることが重要でした。
今回の展示では、パーマネント・コレクションを構成する415点の作品から55点を選出。パーマネント・コレクションは2018年以降、ブリアンツァの中心部、レンターテ・スル・セヴェーゾにあるアートウッド・アカデミー に収蔵・展示されています。
今回のセレクションは、サローネサテリテの約30年にわたる歴史を横断し、その使命の本質を凝縮したものです。それは、まだリサーチの段階にある才能を見出し、生産システムと結びつけ、その後の発展を長期にわたって見届けること。
したがって、これは過去を振り返る回顧展ではありません。デザインが成長するための適切な環境を見つけたとき、そこから何になり得るのかを示す、ダイナミックな「地図」なのです。

「パーマネント・コレクションは静的なアーカイブではなく、若手デザイナー、企業、素材、文化、そして可能性が出会う、生きた風景です。ミラノサローネの新たな国際巡回展の最初の開催地としてジャカルタにこのコレクションを持ち込むことは、サローネサテリテの使命を改めて示すものです。それは、才能に可視性を与え、プロダクションの世界との具体的なつながりを生み出し、ひとつの優れたアイデアがどのように移動し、成長し、プロダクトとなり、キャリアとなり、文化となり得るのかを示すことです。ひとつひとつのプロダクトは、ある始まりの物語を語ると同時に、そこから生まれ得る未来についても語っています。」と、サローネサテリテの創設者・キュレーターであり、ミラノサローネの国際関係アンバサダーを務めるマルヴァ・グリフィン・ウィルシャーは述べています。
また、IDD PIK2のCEO、イペン・ウィジョジョ(Ipeng Widjojo)は次のように語ります。
「サローネサテリテ・パーマネント・コレクションを迎えることは、私たちにとってだけでなく、Indonesia Design District PIK2全体にとっても重要な節目となります。
これは、私たちが推進したい国際交流の精神を体現するものです。すなわち、世界的なデザインの卓越性と、インドネシアで高まりつつあるクリエイティブ・エネルギー、地域のクラフツマンシップ、そして次世代のデザイナーを結びつける対話です。」

IDDがプロモートし、Agung Sedayu Groupのホスピタリティ&ライフスタイル部門である Amantara が運営するインドネシア・デザインウィークは、ジャカルタ北部の都市圏に位置する、デザイン、建築、ライフスタイルに特化した新たな拠点、インドネシア・デザイン・ディストリクト PIK2で開催されます。
この文脈において、サローネサテリテの参加とIDDとのコラボレーションは、ミラノサローネが近年、イタリア大使館貿易促進部(ICE)の支援を受けながら進めてきた、より広範な国際的取り組みの一環でもあります。
これは、イタリアのデザイン文化と、急速に変化する経済・クリエイティブ環境との間に新たなつながりを構築することを目的としたプロジェクトです。
今回のパーマネント・コレクション展は、デザイナー、企業、建築家、デベロッパー、文化関係者、そして東南アジアのクリエイティブ・コミュニティとの対話を具体的に生み出す機会となります。東南アジアでは現在、都市、経済、文化の発展プロセスにおいて、デザインがますます重要な役割を果たしています。
また、本展は、イタリア外務・国際協力省およびイタリア文化省が推進し、世界に向けてイタリアンデザインの卓越性を紹介・発信する「イタリアン・デザイン・デー」の第10回記念企画の一環でもあります。
今年のテーマは「RE-DESIGN. Regenerating spaces, objects, ideas and relationships(RE-DESIGN:空間、モノ、アイデア、そして関係性を再生する)」。マルヴァ・グリフィン・ウィルシャーは、イタリアン・デザイン・アンバサダーとして、ジャカルタで2年連続となる活動を行います。
「ジャカルタでサローネサテリテ・パーマネント・コレクションを展示することには、特別な意義があります。世界中の若手デザイナーにプラットフォームを提供するために創設されたサローネサテリテは、イタリアのデザイン文化が持つ最も重要な特質のひとつを体現しています。それは、多様な才能、スタイル、文化を受け入れ、それらの間に対話を育む能力です。伝統に恵まれた若くダイナミックな国、インドネシアにおいて、この理念は特に豊かな土壌を見出すことでしょう。こうした理由から、在インドネシア・イタリア大使館は、ICE およびイタリア文化会館とともに、この取り組みを全面的に支援しています」
と、駐インドネシア・イタリア大使のロベルト・コラミネ氏は述べています(写真一番右・インドネシア・デザインウィーク・オープニングにて)。

サローネサテリテの空気をジャカルタに再現
建築家リカルド・ベッロ・ディアスとハリアドナ・ピナテが手掛けた展示デザインは、ジャカルタの会場にサローネサテリテの雰囲気と展示構成を再現し、ミラノサローネの会場で体験するような「発見」の感覚を来場者に提供します。
展示は4つのプラットフォームで構成され、それぞれ垂直および水平の要素によって区切られ、空間を囲みながらアクセントを加えています。これらが来場者を展示の各セクションへと導きます。
展示のストーリーに不可欠な要素となるのが、パーマネント・コレクションのグラフィックを想起させる大きなバックライトパネルです。このパネル自体がひとつの展示作品となり、55点の展示作品の解釈を支え、導き、深める二次元の背景として機能します。
その背景のもと、「サローネサテリテ・パーマネント・コレクション展 1998–2024」では、現代デザインのアイコンとなった作品と、比較的新しいプロジェクトを一堂に集めます。そこには、当初はプロトタイプとして生まれたアイデアが時の試練を乗り越え、デザインを象徴する作品へと成長していった軌跡が示されています。

現代デザインのアイコン
現代デザインのアイコンとして紹介される作品には、セバスチャン・ロング(Sebastian Wrong)がFlosのためにデザインした「Spun」ランプ、Nendo/佐藤オオキがDePadovaのために手掛けた「Chab」トレイテーブル、オスカー・ジエタ(Oskar Zięta)の「Plopp」プーフ、セバスチャン・ヘルクナー(Sebastian Herkner)がClassiConのためにデザインした「Bell」コーヒーテーブル、パオロ・ウリアン(Paolo Ulian)がAntoniolupiのために手掛けた「Introverso」洗面台、シュテファン・ディーツ(Stefan Diez)がDante – Goods and Badsのためにデザインした「Falstaff」アームチェアがあります。

さらに、Mist-oによるLiving Divaniの「Daydream」デイベッド、ビッグ・ゲーム(Big-Game)によるMagisの「Little Big Chair」、ニカ・ズパンク(Nika Zupanc)によるQeebooの「Ribbon Chair」、フランチェスコ・ファッチーニ(Francesco Faccini)によるBillianiの「Blue Chair」、フランチェスコ・ゴメス・パス(Francisco Gomez Paz)によるLuceplanの「Mesh」ペンダントランプも展示されます。
長年にわたって愛されてきた作品と並んで、デザインの洞察力が持つ力を直感的に伝える小型プロダクトもセレクションに含まれます。
ハッリ・コスキネン(Harri Koskinen)がDesign House Stockholmのためにデザインした「Block Lamp」、スタジオママ(Studiomama)による木製コートハンガー(後にFritz Hansenのカタログにも掲載)、ジョナサン・ラデッツ(Jonathan Radetz)によるSchönbuchの「Cinema」ガラス製ブックエンド、フランチェスコ・フォルチェッリーニ(Francesco Forcellini)によるCappelliniの「Trace」花器、ザ・スウェデッセ(The Swedes)によるHabitatの「Lab」キャンドルホルダー、デザイン集団 Norway SaysによるSwedeseの「Papermaster」マガジンラック、スタファン・ホルム(Staffan Holm)によるDavid Designの「Tête à Tête」ソルト&ペッパーセット、Permafrostの「Silence」ラグ、スティーネ・オス(Stine Aas)によるNorthernの「Oaki Chair」などです。
さらに、パーマネント・コレクションの最新追加作品、415番目の作品として、フロント(Front)がポッロのために手掛けた「Balancing Boxes」も紹介されます。これは、スウェーデンのデュオが「動きによるデザイン(design by motion)」を探究してきた歩みをさらに一歩進める作品です。

コレクターズアイテム、文化的価値を持つ作品展示の一角では、コレクターズアイテムとなった作品、あるいは文化的価値が認められているプロジェクトを紹介します。サティエンドラ・パハレ(Satyendra Pakhalé)がCappelliniのためにデザインした「Fish Chair」、アノン・パイロット(Anon Pairot)によるRestrogenの「Cell Easy Chair」、ベルトラン・パンスマン(Bertrand Pincemin)によるDMA Productionの「Four mirror」、ジャン・プレハーチュ(Jan Plechac)の「Icon chair」、マタリ・クラセット(Matali Crasset)がDomeau & Pérèsのためにデザインした「When Jim comes to Paris」ゲストベッド、そしてイルッカ・スッパネン(Ilkka Suppanen)がPasi KolhonenとともにSnowcrashのために手掛けた「Airbag chair」などです。「Airbag chair」は、サローネサテリテの初期シーズンから生まれたカルト的な作品です。
若手デザイナーと企業の出会い展示ではまた、若手デザイナーの可能性を見出した企業とのコラボレーションにも焦点を当てています。アトリエ・フェラーロ(Atelier Ferraro)によるLigne Rosetの「From the Moon」ランプ、ナタリー・デウェズ(Nathalie Dewez)の「Lamp06」、OTO.berlinによるBeluxの「Oto」ランプ、Truly TrulyによるTacchiniの「Daze」コーヒーテーブルなどです。これらは、デザインリサーチと生産、個人のビジョンと産業的な発展を結びつけるという、サローネサテリテの極めて重要な機能を具体的に示す事例です。

世界の主要美術館に収蔵された作品
コレクションはまた、世界の主要美術館によって収蔵された作品の歴史も記録しています。
ドイツのデザイン・コレクティブ、ベア&ネル(Bär + Knell)による「Zeitdokument(Time Document)」はロンドンのVictoria and Albert Museumに収蔵されています。
カルロ・コンティン(Carlo Contin)による折りたたみ式の「Satellite」センターピースは、現在ニューヨークのMoMA Design Storeで紹介されています。
また、ロレンツォ・ダミアーニ(Lorenzo Damiani)とDaaによる「Benna」ベンチも展示されます。同作品は、第21回ミラノ・トリエンナーレ国際展「Design after Design」のために、「Rosso Triennale」バージョンとしても制作されました。

デザイナーという職能の進化本展では、デザイナーという職能そのものの進化にも光を当てます。今日、デザイナーには、作者、職人、研究者、そして起業家としての役割が、ますます求められるようになっています。その変化を示す作品として、ブラジル人デザイナー、セルジョ・マトス(Sérgio J. Matos)による航海用ロープを使った「Piraruc」アームチェア、ルーカス・ダレン(Lukas Dahlén)がRingvideのために手掛けた「Frame」キャビネット、バナナ繊維から制作されたMirei Monticelliの「Nebula」ランプ、韓国のグループUmzikimによる「Bookstack」本棚、アンドレー・ブトコ(Andrey Budko)の「Hear My Roooar」ラグ、エリーゼ・ルティック(Elise Luttik)の「Upside Down Chair」、そしてマッシモ・ドゥローニ(Massimo Duroni)の「Svaso」プランターホルダーなどを紹介します。「Svaso」は、シンプルなプラスチックチューブを組み合わせて制作されたもので、1999年という早い時期から、環境負荷の低いデザインへのアプローチを示していた作品です。
ジャカルタ、そしてアジアへのオマージュジャカルタでの展示は、開催都市そのものへのオマージュでもあります。Studio Hendro Hadinataがジャカルタを拠点とするインドネシアブランド、EVERY Collectionsとのコラボレーションによって開発した「Plank Chair」は、象徴的な意味で「故郷」へと帰還します。このオマージュはアジア全域へと広がります。サローネサテリテに参加したマレーシアのコレクティブ、Tanggamとのつながりを持つShahril Faisalの竹製花器、韓国人デザイナーSuntae Kimによるメタルトレイ、そして台湾のデザインスタジオViiChendesignがCaminoのために手掛けた「Interlaced」スクリーンランプが紹介されます。
詩的で実験的なデザインサローネサテリテのアイデンティティの一部であり続けてきた、より詩的で実験的な側面も、本展では明確に示されています。その象徴となるのが3つのランプです。トネリコ による「Memento」は2005年に発表された作品。Aatismo studio がLuminaのために手掛けた「Aether」は、日本のオーガンザ製の花びらをホウケイ酸ガラスのベルの内部に吊り下げた作品です。そして沖津雄司がDCW éditionsのためにデザインした「Focus X5」は、天文学から着想を得たモビール型の光の彫刻であり、動きの軽やかさと造形的な繊細さを融合させています。
サローネサテリテ・アワードから生まれた作品今回のセレクションには、2026年に第15回を迎えたサローネサテリテ・アワードに関連するプロジェクトも含まれています。そのひとつが、ベネズエラ人デザイナー、フアン・コルティソ(Juan Cortizo)、によるQuibor collectionの「Colibrì」スピーカーです。同作品は2025年にHonourable Mention(佳作)を受賞しました。また、田村奈穂 によるシリコン製プレートの「Seasons」コレクションも紹介されます。同作品は2010年の第1回サローネサテリテ・アワードで受賞し、すぐにCovoによって製品化されました。
ADI コンパッソ・ドーロ受賞作品展示の最後を飾るのは、イタリアで最も権威あるデザイン賞のひとつであるADI Compasso d’Oro(コンパッソ・ドーロ賞)を受賞したプロダクトです。ダニエル・ライバッケン(Daniel Rybakken)がLuceplanのためにデザインした「Counterbalance」ウォールランプ、フェリシア・アーヴィ(Felicia Arvid)がCaimiのために手掛けた吸音パネル「Klipper」、Foscariniとの同じリサーチ・コラボレーションから開発された「Pli」ペーパーランプ、そして 田村奈穂がポッロのためにデザインした「Origata」コンソールテーブルを紹介します。「Origata」は、2026年のADI コンパッソ・ドーロ賞において特別賞を受賞したばかりの作品です。

歴史を祝うだけでなく、新たな軌道へ
「サローネサテリテ・パーマネントコレクション展 1998–2026」は、全体として、単に歴史を祝うための展覧会ではありません。
それは、その歴史を新たな方向へと進めるものです。
展示されるひとつひとつの作品は、決定的な瞬間を物語っています。
若いデザイナーと企業との出会い。
ビジョンと素材との出会い。
地域文化とグローバル市場との出会い。
ジャカルタから、ミラノサローネは新たな国際的な軌道へと踏み出します。
それは、関係性を築き、新たな領域を切り拓き、デザインがすでに未来を形づくり始めている場所へと進んでいくためのプラットフォームとして、自らの役割を改めて示すものです。
*展示画像:SalaoneSatellite Permanent Collection 1998-2024 Exhibition – Courtesy of Indonesia Design District
| 開催概要 SaloneSatellite Permanent Collection Exhibition 1998–2026(サローネサテリテ・パーマネントコレクション展 1998–2026) インドネシア・デザインウィーク 会期:2026年9月18日(金)~ 27日(日) 会場:Townhall IDD (インドネシア・デザイン・ディストリクト〈IDD〉PIK2/ジャカルタ) オープニングセレモニー 2026年9月18日 会期 2026年9月18日~10月18日 サローネサテリテイベント・キュレーション マルヴァ・グリフィン・ウィルシャー (サローネサテリテ創設者・キュレーター) 運営事務局 キアラ・ギラルディ 展示・グラフィックデザイン リカルド・ベロ・ディアス、ハリアドナ・ピナテ プロジェクトコーディネーター ポルツィア・ベルガマスコ |



